建築物の解体工事の流れ - わかりやすく図と写真と動画で解説 –
あなたがこの記事をご覧になっているという事は解体工事を行わないといけない事情ができたからだと思います。筆者が住む沖縄でも解体工事は至る所で行われており、建物の建替はこれからも続くでしょう。
初めて解体工事をする時に何から手をつけていいのか、わからない方がほとんどです。また、解体工事自体が専門性が高いこともありわからないまま業者に依頼してしまうと工事費が割高になったり、工期が長くなったりなど対応が悪く納得のいく解体工事にならないこともしばしば見受けられます。
建物の解体工事は費用も高く、近隣に住む方々にも少なからず迷惑がかかるので業者選びを間違えてしまうと、工事内容に納得いかないだけではなく、最悪な場合、近隣トラブルまで発生してしまうことがあります。
そこでこの記事では建物の解体工事をできる限りわかりやすく解説して見ました。
長文になる記事ですので、時間のない方は最初の項目だけ先に目を通して全体の流れを把握して時間がある時にしっかりとお読みください。
Contents
解体工事の大まかな流れ「時間のない方はこちらまずは図で整理!」
まずは解体工事に関わる流れを図で掲載しました。大きく分けると「解体業者の選定」「工事前の準備」「解体工事」「工事後の対応」の4つに分別すると整理しやすいです。下記のフロー図を先に目を通しておくと詳しい内容が頭に入りやすいことでしょう。
STEP01の「解体業者の選定」は解体工事を依頼する業者を選定して契約するまでに把握しておくことや選定するまでのやる事をまとめています。
STEP02の「工事前の準備」は沖縄県や各地域の役所に提出する届出の説明や解体工事前に行う近隣対策、解体工事を円滑に行うための大切な段取りとなります。
STEP03の「解体工事」に関しては解体工事自体の流れの説明となっています。
STEP04の「工事後の対応」に関しては解体工事完了後に行う沖縄県や各市町村への届出の説明や解体工事ごのアフターフォローについてなどをまとめています。
それぞれ過程を分けてご説明するので長文となりますが理解して解体工事にのぞむことが大切ですのでしっかりと理解されてくださいね。
解体業者の選定
まずは解体工事のことを知ろう!
解体工事を行う際に大切な事は解体工事の大まかな流れを把握し、やる事や工事のリスクなどもしっかりと理解しておくことが大切です。何もしならずに業者任せにして近隣トラブルが起きた時に業者がしっかり対応して責任をとったとしても近隣の方に迷惑をかけた事実は残りますし、人間関係がギクシャクしてしまうことも。お金や誠意ある対応だけで解決できないこともありますので、解体工事の一つ一つの流れをこのページで理解していただき、納得のいく解体工事にしたいですよね。
そのためには何よりも「解体工事」のことを知ることです。
専門的でわかりにくい点がありますが一つ一つ考えていくことで理解度が深まりますので、このページで得た知識をベースとして情報収集していきましょう。
解体業者の選定
解体工事の知識をある程度勉強したら、早速行動を起こしましょう。沖縄県内から解体工事業者を3つ選定して見積依頼を行います。あまり多いと各業者との対応や見積の精査に疲れますので、3件以上に依頼する場合は金額差が大きい時や担当者とのフィーリングが合わない時などにしましょう。解体業者選定疲れ、、(笑)が起きないようにするにも見積を依頼する業者の選定がとても大切です。
まず、最初にインターネットの検索などで沖縄県内の解体工事業者を検索します。解体工事業者もかなりの数存在していますのでポイントとしては下記にリストアップします。
・解体工事業者としてWEBサイトを所有しているか
・企業としての実態はあるか(当たり前ですがリストアップ)
・解体工事の資格を持っているか
・工事実績を公開しているか
・解体工事の実績が豊富か(規模・用途・各地域での施工)
このあたりは大切なポイントです。
ホームページで情報を丁寧に公開している企業は社会との接点を大切にしている証拠です。業務に対する意識が一般的に高く、工事の説明や見積書の内容などの項目もしっかり掲載しており、丁寧な対応をしてくれる傾向にあります。企業としての実態や解体工事業の資格の所有に関してはホームページの会社概要などを確認してチェックしましょう。
解体工事の実績に関しては次にチェックするポイントです。実績が多いという事はお客様から納得していただいている証拠の一つとなります。また、解体工事にも住宅からマンション、商業施設、公共施設など様々な用途があります。一つの用途に特化した実績だと技術力と経験値でいうと不安です。様々なお客様の要望、近隣との関係構築、用途に関わるケースごとの経験は、不測の事態が起きた時の対応力にもなりますので解体工事の実績の内容までチェックしてみると良いでしょう。
また、ゼネコンのような大企業や元請けも下請けも行う中規模の企業さらには個人での業者など大きく3つのパターンがあります。大企業のほとんどは中規模の解体工事業者に依頼していることが多くこちらに関しては大企業も中規模の企業も工事の質は変わらないでしょう。コストも中規模の企業が大企業と比較してもリーズナブルとなっているはずです。個人事業者は確実に一番安いと思います。一方では安く受注するという事は数多く受注しないと経営が成り立ちません。そう考えると近隣対策や工事のスピード感、丁寧な説明など業務を遂行するためにかける時間が取れない可能性があり、対応が物足りない事業者が多いです。
上記のような特徴を理解した上であなたにあった業者をしっかりと3社選定しましょう。さらに予備として、その3社で決まらなかった時に依頼する別の業者も数社控えておくと良いと思います。
お問い合わせ(現調、見積依頼)
業者を選定したらそれぞれの業者に電話やメールなどで問い合わせをして、解体する建物を見てもらい見積書の作成を依頼します。こちらは専門用語で「現調」といい、現地調査のことをいいます。現地調査の時に担当者に色々と質問したり、素人にもわかりやすく返答できるか、専門的な内容がわからなくても、わかるまで丁寧に接してくれるかなど、企業としての姿勢や誠実さを見てあなたとのフィーリングがあうかも確認しておきましょう。ちゃんとメモしておいたほうがより適正な判断につながります。
次に各業者から見積書が提出されると思います。メールで具体的に文章として残して説明する業者や、長文のメールで伝えるより直接面談してわかるまで説明する業者など、説明する方法は様々ですのであなたにあう方法で見積を受け取ってください。見積書がざっくりな企業は安心できないので選定しないようにしましょう。
各業者の見積もり項目が異なる時は、それぞれ抜けている項目について質問したりして工事内容に漏れがないか、高い項目は安くならないかなど交渉してみることも良いと思います。そこで業者とのコミュニケーションを行うことで、業務を依頼した時の対応などのイメージもつきやすくより安心して工事依頼を行えると思います。
また、沖縄の場合、台風や梅雨時期にはなかなか工事を進行できないのでその辺りも配慮しながら工事時期を決めることも大切です。解体工事のスケジュールなども選定した業者と必ず確認してから契約に至るようにしてください。
見積書と業者とのやりとりを細部まで行い、解体工事費用や費用に含まれる内容に納得したところで工事契約を交わします。
契約書は契約日前に受け取り、事前にしっかりと読み込んで、わからない点は明確にしてもらい理解した上で契約しましょう。
工事前の準備
解体工事に入る前に沖縄県や各市町村への届出が必要となります。建物や現場の状況によって必要書類と届出の内容は異なりますが、基本的には解体業者がしっかりと法律をもとに説明し書類等の作成から届出までは代行して行いますので委ねてしまって良いでしょう。主な届出としては下記の内容となります。
・建設リサイクル法 解体工事事前届出(県、市町村)
・特定建設作業開始の届出
・騒音・振動届書(市町村)
・工事現場場所管轄警察署への届出 道路使用許可(警察)
・再資源化等実施状況報告書届出(市町村)
こちらの届出が受理され、許可が降りた後に解体工事を始めることができます。
近隣対策
沖縄県、市町村における各省庁への届け出の許可がおりるりた後には、近隣住民へのご挨拶など近隣対策を進めて行きます。解体工事自体はクライアント側の都合で行う工事です。近隣住民も基本的には騒音や振動があることはわかっていますが、工事の案内や挨拶をしないまま工事を行うと当然トラブルの元になります。また、解体工事前にしっかりと誠意を持って挨拶するだけで万が一何かあった場合の対応もしやすくなります。業者側も経験のある担当者が回ると思いますので工事内容やスケジュールなど丁寧に伝えてくれることでしょう。
不要物の処分と配管・配線の撤去の手配
解体工事前に行う作業として大切なことが、電気、ガス、電話などの引き込んでいる設備管の撤去を行います。これらを撤去しないで行うととても危険です。
・電気は沖縄電力
・ガスはガス業者(支払書など確認して依頼されてください)
・浄化槽(専門業者か解体業者に依頼)
・有線放送(BS、CATVなど)
などこの辺りの段取りはクライアント側で行うことが一般的です。解体業者と段取りの話を確認して公示日の2〜3日前までには完了しておくようにしましょう。
また、建物内の家具、設備の不要物も工事前に済ませておきます。こちらは解体業者が行い引き取ってくれることが一般的ですので見積時に業務内に含めるように伝えましょう。
解体工事
足場や養生の組み立て
工事まえの準備を一通り行った後に本工事(解体工事)がスタートします。すぐに解体工事を始めるのではなく、作業するために必要な足場を組み立てていきます。解体工事は高所での作業もありますので、足場を組み立てた後に防音シートや防炎シートを足場に取りつけて、騒音とほこりの飛散を最小限に防ぐために綿密に取り付けます。
建物内部の解体、撤去作業
建物の解体工事を始める前に建物内部にある内部造作物を撤去していきます。壁材や天井材、アルミサッシ、建具、住宅設備、断熱材や石膏ボード、屋根材(瓦)などを職人の手によって取り壊していき、それを分別して必要箇所に撤去していきます。
建物本体の解体工事
建物内部の解体と撤去を終えたら本体の躯体を解体していきます。ここで一般的によく見る重機の出番となります。建物の高い箇所から順序よく取り壊していきます。騒音やほこりを最小限にできるのも職人の経験や能力によることが多いです。また、ほこりが飛ばないようにしっかりと散水も行っていきます。
この建物本体の躯体工事が一番近隣に迷惑をかける工程となっていますので、クライアントが現場に顔を出すことをオススメします。そのことにより職人たちも緊張感を持って解体工事にのぞますし、近隣住民へどのように迷惑をかけているか認識もできて、万が一の時に良いかと思います。
建物の解体工事は沖縄の場合コンクリート造が一般的なこともあり、基礎部分の解体まで行います。基礎部分には杭が埋まっているものあり、杭に関しては撤去せず、今後建築物を建設する時に必要なのでマーカーを設置してわかるようにしておきます。
廃材の収集や分別、搬出。産業廃棄物の処理
建物を解体していくとコンクリートだけでなく、鉄筋や部分的に取り付けている鉄骨素材、アルミサッシの窓枠など様々な部材が取り怖さます。それらは同じ処分場に廃棄するのではなく、部材ごとに分別してそれぞれの処分場に運搬していきます。また、鉄筋などの鉄素材はリサイクルされますので専用の受取り業者に届けます。
地中に埋まっている埋設物の撤去
建物の解体工事が終わったら設備などの配管などを撤去します。その際に解体工事によって発生した廃材などが埋まっていないかなども確認し、合わせて撤去します。ごく稀に把握していない地中埋設物などがあり追加費用が発生することがあります。その場合は費用に含めてもらえるようお願いしてみてはいかがでしょうか?解体業者の裁量にもよりますが基礎部分の作業とまとめて遂行してくれる場合もあります。そのためにも解体業者の選定と関係のもち方はうまくできていると良いですね。
整地
全ての解体工事が終わり、廃材を撤去したら最後にその土地を平らに整地します。この整地作業もとても大切です。特に駐車場として利用する場合はアスファルトを舗装するために、水勾配なども考えないといけません。
解体工事完了
整地まで終えると解体工事は終了となります。クライアントに現場確認していただき引き渡しとなります。引き渡しご解体工事業者から請求書が送られてくると思いますので、お支払いしてください。
解体工事後
建物滅失登記の手続きを忘れないで!
解体工事が終わってもまだ全ては終わっていません。解体工事後に建物所有者が取り壊された日から1ヶ月以内に建物滅失登記を行わないといけません。これは法律でも義務付けられており、固定資産税を支払義務が残ったり、解体後に建築を行う場合も建築確認申請が降りず工事ができなかったりするので気をつけてくださいね。行政書士や司法書士に業務依頼することもできますのでその時の状況に合わせてご検討ください。
建物滅失登記に必要な書類は「取毀証明書「印鑑証明書」「資格証明書」が一般的でケースによってはそれ以外の書類を求められることがありますので、ご自身で手続きを行う方は事前に法務局に問い合わせて調べておきましょう。
近隣へのお礼を忘れずに!
解体工事を終えてホッとして忘れがちなのが近隣の住民へのお礼です。解体工事が滞りなく終わりましたと顔を出すだけでもその後の関係も良好になりますし、工事における不安もなくなり良いことでしょう。
まとめ
いかがだったでしょうか?
沖縄で解体工事を行う際の流れをできる限りわかりやすく掲載しました。専門的な工事の説明になるので長文になってしまいましたが、最後までお読みいただきありがとうございます。
掲載写真も実際の現場画像を入れていますのでより現実に沿った情報となっています。
解体工事の流れを知ることで解体業者の動きが見えて安心して解体工事に望むことができると思います。一番のポイントは解体工事業者の選定になると思います。安心できる業者を選定できれば解体工事自体は近隣対策も含めてとてもスムーズに進行していくことでしょう。
まずは解体工事の知識をつけること。収集しているときは完全に理解できていなくても業者選定でコミュニケーションをかわしてくと徐々に理解が深まっていきます。
苦手意識などはあまり持たずに気軽に情報収集していきましょう。
何よりも大切な資産であり、これまでの想い出の詰まった建物です。
良い解体工事が実現できると良いですね。